コミュニケーション能力とは?6つの構成要素とそれぞれの高め方を解説します
キズキ共育塾のあべあいりです。
誰しも自分の「コミュニケーション能力」について悩んだことがあるのではないでしょうか?
たとえば…
- 「初対面の人と何を話したらいいのかわからない」
- 「本当はこう思ってるけど、何故かいつも相手に伝えられない」
- 「相手の気持ちを察することが苦手」
など。
わたしも同じような経験を何度もしました。
「自分はコミュ力が低い、なんとかしなきゃ!」と思って、コミュニケーション能力に関する本を読み漁ったこともありますし、動画をみて勉強したこともあります。
しかし、そもそも「コミュニケーション能力とは何か」がわかっていないと、その学習の目的を見失って長続きしないのです。
今回は、そんなわたしの経験も踏まえて、「コミュニケーション能力」とは何か、そしてどういった方法でコミュ力を高めていけばよいのかをお伝えできればと思います!
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目次
「コミュニケーション能力」を取り巻く問題
コミュニケーション能力とは、「コミュニケーション全般における複合的な能力」のことです。
言語や非言語を介して、メッセージを受け取る・理解する・伝える・行動することが、一連のコミュニケーションのフローだと考えてみてください。
しかしそうした一般的な説明だけでは語れないのが「コミュニケーション能力」です。
たとえば、
- 基本的なあいさつや思いやりある行動がとれる
- 自分の考え・感情を理解し、相手に適切に伝える
- ストレス状況下や緊張状態にある際の自己統制
- 相手の言葉や状況を察知し、理解や共感、適切な行動をする
- 社交性や好意的に人と付き合える
- 部下など人を動かすことができる
など。
どれも欠かせない「コミュニケーション能力」の一部です。
そんな複雑な「コミュニケーション能力」は、さまざまな場面で、定義を明らかにされないまま使われています。
そのひとつの例として、経団連の「新卒採用に関するアンケート調査結果」において、新卒採用において特に重視した点で「コミュニケーション能力」が15年連続1位となっています。(参考:一般社団法人日本経済団体連合会『2018年度 新卒採用に関するアンケート調査結果』)
多くの人の頭を悩ませる就職活動において「コミュニケーション能力」が重視されていますが、企業が必要としているコミュニケーション能力はどのようなものか、具体的には明示されていません。
わたしは以前友人から「就活でコミュニケーション能力が低いとフィードバックされたのだけど、どうしたらいいか分からない」と相談されたことがありました。
採用担当者は「コミュニケーション能力」という万能的な言葉をフィードバックの一部として使ったのだと思います。
しかし、就活生にとっては抽象的すぎるフィードバックとなってしまいました。
このように、「コミュニケーション能力」は、現代社会において期待される能力である一方で、定義が体系的に明示されていないことによって、曖昧に使われているのです。
この記事を読んでいる「コミュニケーション能力」に悩む皆さんには、もう一歩踏み込んでコミュニケーション能力の構成要素を掴んでいただき、自分のコミュニケーションステータスを明らかにしていただきたいと思っています。
「コミュニケーション能力」の構成を知ろう!
前章で説明した通り、コミュニケーション能力は複合的な意味を持つ万能な言葉です。
この章では、コミュニケーション能力の構成要素をひとつずつ説明していきます。
構成要素を明らかにすることによって、コミュニケーションにおいての自分の強みとは何か、さらに足りないところは何かを知るきっかけになります。
コミュニケーション・スキルを定義した「ENDCOREモデル」を元に、コミュニケーション能力の構成要素を解説していきたいと思います。
ENDCOREモデルとは、「コミュニケーション・スキル(能力)」を具体的な6つの能力に細分化したもので、藤本学、大坊郁夫(2007)の研究によって意味付けられたものです。
以下の解説も、同研究を参考にして進めていきます。
下記の図中、三角形の中にあるものは、コミュニケーション・スキルを成す6つの構成要素を表すものです。
まずは、各構成要素について、日常に起こりうる得意な例・苦手な例とともに解説します。(例ですので、状況に応じて全ての場面で「得意」「苦手」を表すものではありません)
コミュニケーション能力の6つの構成要素
①自己統制
自分の感情や行動をうまくコントロールする力のことです。
得意な人の例…ストレスが溜まったら、休憩して深呼吸をすると落ち着くと知っている
苦手な人の例…ストレスが溜まると、ついカッとなって人に当たってしまう…
②表現力
自分の考えや気持ちをうまく表現する力のことです。
得意な人の例…「最近あまり会えてなくて寂しく思ってるの。」
苦手な人の例…「私が怒ってる理由がどうしてわからないの!」
③読解力
相手の伝えたい考えや気持ちを正しく読み取る力のことです。
得意な人の例…「大丈夫って言ってるけど大丈夫じゃないよね?心配事はなに?」
苦手な人の例…「大丈夫ってことだから、いつまでも不安な顔しないで頑張ろうね!」
④自己主張
自分の意見や立場を相手に受け入れてもらえるように表現する力のことです。
得意な人の例…「この提案を採用すれば、全体の効率は良くなるけど一つひとつのケアが手薄になるから私は反対かな。」
苦手な人の例…「この提案、わたしは反対です!」
⑤他者受容
相手を尊重して相手の意見や立場を理解する力のことです。
得意な人の例…「このツールを導入すれば、皆の売上成績もきっと良くなるね!」
苦手な人の例…「便利なツールを導入しても、皆の成績が上がると思ったら大間違い」
⑥関係調整
周囲の人間関係にはたらきかけ良好な状態に調整する力のことです
得意な人の例…「最近、○○さんが元気がないみたいだからご飯に誘ってみようかな」
苦手な人の例…「最近、○○さんって付き合い悪くなったよね。もう誘わない方がいいかしら」
基本スキルと対人スキル
紹介したコミュニケーション能力の6つの構成要素は、「基本スキル」と「対人スキル」の2つに分類できます。
①基本スキル
基本スキルとは、会話に関する初歩的なスキルのことを指します。
構成要素では、自己統制、表現力、解読力が該当します。
会話の「空気」を読みながら、自分の意見や感情を発信する、といったスキルセットになります。
②対人スキル
対人スキルとは、基本スキルのベースに構成されているスキルになります。
構成要素では、自己主張、他者受容、関係調整が該当します。
基本スキルが備わった上で、他者の意見を受容・尊重しながら意見を述べたり、関係性を考慮した言動をしたりなど、より高度な「空気」を読んだ言動のことをいいます。
コミュニケーションの系統
さらに、コミュニケーション能力の構成要素は、「表出系」「反応系」「管理系」という切り口からも、3種類の系統に分けることができます。
それぞれの系統の得意不得意によって、普段どのようなスタンスでコミュニケーションを取っているかなどの傾向を探ることができます。
①表出系
表出系という系統には、「表現力」と「自己主張」が該当します。
表出系のコミュニケーションが得意な場合の特徴は、
- 自分の考えを、言葉・しぐさ・表情でうまく表現し、感情や心理状態を正しく表す基本的な「表現力」がある
- 柔軟に相手に合わせながら会話を進めたり、自分の意見や立場を論理立てて話す「自己主張」ができる
ということです。
自分が会話の中心で話すことが多かったり、まとめ役になる印象が強たったりするならば、表出系のコミュニケーションが得意な傾向があるでしょう。
②反応系
反応系という系統には、「解読力」と「他者受容」が分類されます。
反応系のコミュニケーションが得意な場合の特徴は、
- 相手の考えを言葉・しぐさ・表情から正しく読み取り、感情や心理状態を敏感に感じ取る「解読力」がある
- 相手の意見・立場を受け入れ、尊重・共感する態度がとれる「他者受容」ができる
ということです。
自分が聞き役に回ることが多かったり、多数決などの場面ではお互いの意見をちゃんと聞こうとする印象が強ければ、反応系のコミュニケーションが得意な傾向があるでしょう。
③管理系
管理系という分類には、「自己統制」と「関係調整」が当てはまります。
管理系のコミュニケーションが得意な場合の特徴は、
- 自分の衝動・欲求・感情をコントロールし、状況を加味して期待に応じた「自己統制」の取れた行動ができる
- 人間関係を第一に考えて、意見・感情の対立を適切に対処し、良好な状態の維持を心がける「関係調整」ができる
ということです。
自分が聞き役に回ることが多く、意見・感情の対立に介入し、周りの対人関係を良好な状態にすることができる印象が強ければ、管理系のコミュニケーションが得意な傾向があるでしょう。
自分がどの傾向が強く、どの傾向が弱いのかを判断してみて、自分に足りない能力は何かを明らかにしてみるとよいでしょう。
自分の苦手なコミュニケーションを考えてみる
コミュニケーション能力の構成要素が分かったところで、次は自分の得意・不得意なコミュニケーション・スキルは何かを考えてみましょう。
たとえば対人スキルが苦手だと思っている人がいたとします。
対人スキルのうち、
自分の意見や感情を相手に伝える「自己主張」が苦手なのか?
相手の意見や感情を読み取る「読解力」が苦手なのか?
周囲の人間を気使う「関係調整」が苦手なのか?
それによって、対処の仕方が変わってきます。
自分のコミュニケーション傾向をセルフチェックしよう!
下記の表を見ながら、自分のコミュニケーションの得意・不得意の傾向をセルフチェックしてみてください。
一人ではわからない方は、家族や友人に評価してもらうと、より客観的な視点からコミュニケーション能力を探ることができます。
| メインスキル | サブスキル | 項目分 |
|---|---|---|
| 自己統制 基本スキル 管理系 |
欲求抑制 | 自分の衝動や欲求を抑える |
| 感情統制 | 自分の感情をうまくコントロールする | |
| 道徳観念 | 善悪の判断に基づいて正しい行動を選択する | |
| 期待応諾 | まわりの期待に応じた振る舞いをする | |
| 表現力 基本スキル 表出系 |
言語表現 | 自分の考えを言葉でうまく表現する |
| 身体表現 | 自分の気持ちをしぐさでうまく表現する | |
| 表情表現 | 自分の気持ちを表情でうまく表現する | |
| 情緒伝達 | 自分の感情や心理状態を敏感に感じ取る | |
| 解読力 基本スキル 反応系 |
言語理解 | 相手の考えを発言から正しく読み取る |
| 身体理解 | 相手の気持ちをしぐさから正しく読み取る | |
| 表情理解 | 相手の気持ちを表情から正しく読み取る | |
| 情緒感受 | 相手の感情や心理状態を敏感に感じ取る | |
| 自己主張 対人スキル 表出系 |
支配性 | 会話の主導権を握って話を進める |
| 独立性 | まわりとは関係なく自分の意見や立場を明らかにする | |
| 柔軟性 | 納得させるために相手に柔軟に対応して話を進める | |
| 論理性 | 自分の主張を論理的に筋道を立てて説明する | |
| 他者受容 対人スキル 反応系 |
共感性 | 相手の意見や立場に共感する |
| 友好性 | 友好的な態度で相手に接する | |
| 譲歩 | 相手の意見をできる限り受け入れる | |
| 他者尊重 | 相手の意見や立場を尊重する | |
| 関係調整 対人スキル 管理系 |
関係重視 | 人間関係を第一に考えて行動する |
| 関係維持 | 人間関係を良好な状態に維持するように心がける | |
| 意見対立対処 | 意見の対立による不和に適切に対処する | |
| 感情対立対処 | 感情的な対立による不和に適切に対処する |
Q1.基本スキルがあるか?
コミュニケーション能力は、「基本スキル(自己統制・表現力・解読力)」が積み上がった上に、「対人スキル(自己主張・他者受容・関係調整)」が身につきます。
コミュニケーション能力が低いとお悩みの方は、まずは基本スキルが身についているかを考えてみるとよいかもしれません。
Q2.コミュニケーション系統の傾向は?
基本スキルがある程度身についているなら、表出系(表現力・自己主張)、反応系(解読力・他者受容)、管理系(自己統制・関係調整)のどの系統のコミュニケーションが多いかを考えてみてください。
これによって、自分の普段のコミュニケーションがどのように偏っているかを考えることができます。
表出系と反応系は「対」になる関係性を持っています。
表出系が高ければ、反応系が低い傾向にあり、その逆もありえます。
2つともバランスよく身につけることが重要です。
また反応系と管理系は相互関係にあり、反応系が高ければ管理系も高く、その逆もあります。
このように、コミュニケーション能力をいくつかの側面からみることができます。
あなたはどのような結果になったでしょうか?
苦手なコミュニケーション能力を高める方法
自分のコミュニケーション能力傾向が分かったところで、いよいよ6つのコミュニケーションスキルを高める方法を紹介します。
①自己統制:アンガーマネジメントとストレス・コーピング
自己統制を高めるためには、アンガーマネジメントやストレス・コーピングを身につけるとよいでしょう。
■アンガーマネジメント
イライラしているときやストレスが溜まっているときは、対人関係に悪い影響を与えてしまうことが多いですよね。
他人に対してキツい言い方をしたり、八つ当たりしてしまったりして、後悔した経験があると思います。
アンガーマネジメント(怒りのマネジメント)は、怒ることを否定するものではなく、怒りの感情を上手く抑えて表現することを指しています。
人間の怒りは3段階に分けられます。
- マイルドな怒り…好きじゃない、嫌だ、同意できない
- 中程度の怒り…イライラする、反対だ、腹立たしい
- 激怒…カッカする、殴りたい、頭にくる
全ての怒り感情を我慢するのではなく、マイルドな怒りまでを適切に人に伝えることが大切です。
優しい口調で何が嫌いなのか、どうしてほしいのかを伝えるように心がけましょう。
また人間の怒りの沸点は、およそ「6秒」と言われています。
カッとなって、瞬発的に物申したくなったとしても、心の中で6秒数えて深呼吸をすると怒りを少し鎮めることができます。
■ストレス・コーピング
ストレス・コーピングは、ストレスの元にうまく対処しようとすることを指しており、次の2つの対処法があります。
1:問題焦点コーピング
ストレスの元に働きかけて、それ自体を変化させて解決を図ろうとすること
2:情動焦点コーピング
ストレスの元に働きかけるのではなく、それに対する考え方や感じ方を変えようとすること
対処によってストレス元が変化可能な場合は問題焦点コーピングが適切で、変化が不可能な場合は情動焦点コーピングが適切であると考えられています。(参考:e-ヘルスネット「ストレスコーピング」)
②表現力:アサーション
表現力を高めるためには、アサーションを身につけるとよいでしょう。
アサーションとは、よりよい人間関係を構築する方法で、「人は誰でも自分の意見や要求を表明する権利がある」との立場に基づく適切な自己主張・表現力のことです。
簡単に言うと、自分の気持ちに気付き、言葉・表情・しぐさなどで相手に伝える方法です。
大人になるほど周りの同調圧力によって自分の意見・感情を飲み込むことが多くなります。
それも立派な自己統制ですが、やりすぎると逆にストレスになってしまいます。
自分の感情や考え方を掴みながら、相手とコミュニケーションを取るアサーションの方法として、「I(わたし)メッセージ」があります。
「Iメッセージ」を解説するには、反対の「YOU(あなた)メッセージ」と比較すると分かりやすいでしょう。
「YOUメッセージ」とは、隠れた主語「YOU」が存在するメッセージのことを言います。
「勉強しなさい」→「(あなたは)勉強しなさい」
「書類はちゃんと管理してくれよ」→「(あなたは)書類を管理しなさい」
「コミュニケーション能力がない」→「(あなたは)コミュニケーション能力がない」
こういう風に言われると、なんだか嫌な気持ちになりますよね。
それを「I(わたし)メッセージ」に変えてみると、
「(わたしは)この後、一緒に買い物に行くのを楽しみにしているから、勉強してもらいたいな」
「わたしは机の上を綺麗にしたら効率が良くなったから、書類は整理整頓した方がいいよ」
「わたしは、もっとあなたのことを知りたいから、コミュニケーション能力について学んでみてほしい」
となります。
自分の気持ちと一緒に、相手にどうしてほしいかを提案すると、言い方も自分の感情も、柔らかく和やかになりませんか?
このように相手に何かを要求する際には、「Iメッセージ」を意識してみてください。
自分の気持ち・考え方に気付けるようになり、伝え方も優しくなります。
③解読力:メンタルモデルに耳を傾ける
解読力を高めるためには、「メンタルモデルに耳を傾けるトレーニング」をおすすめします。
まず、メンタルモデルとは、原体験などによって身についた価値観や考え方のようなものです。
次に、耳を傾けるとは「きく力」のことを指しています。
「きく」には3種類の意味があります。
- 聴く…相手の言いたいことを受け止めること
- 訊く…自分が知りたいことを相手にきくこと
- 聞く…音や声が耳に入ってくること
なかでも最も重要なのは、相手の本当に表現したいことを「聴く」力です。
「聴く力」を発揮して、相手の言動を読み取り、受け入れるためには、相手のメンタルモデルを想像することが求められます。
「聴く力」と「メンタルモデル」について、例を記します。
知らない犬に噛まれた経験のあるAさんは、「犬は怖い存在」という価値観を持っています。
一方、犬を飼っていて楽しい思い出ばかりのBさんにとって、「犬は家族」です。
犬を飼った経験がないCさんは、「飼いたいけど、迷っている」状態です。
すると、犬についての話題になったとき、Aさん、Bさん、Cさんは、それぞれの経験について語らなくても、異なる反応・言動をするはずです。
その反応・言動を解読できると、「Aさんはあまりいい顔をしなかったから、犬に嫌な思い出があるのかな…」と予想を立てた上で会話を進められますよね。
このように、人の言動を、海面から見えている「氷山の一角」と考えて、海底に隠れている価値観や考え方をちゃんと探り、知ることが、メンタルモデルに耳を傾けるということです。
たくさんの人のメンタルモデルを知ることによって、相手の気持ちや考えを想像できるようになってきます。
なお、「訊く力」は、相手に興味をもって「訊く」ことで「あ、もっと話しても良いんだ!この話が受け入れられた!」と思えて安心して話してくれる雰囲気をつくることに役立ちます。
また、相手の話を全て受け止めていたら、しんどさを感じることもありますから「聞く力(聞き流す力)」も大切です。
④自己主張:ロジカルシンキング
自己主張を高めるためには、ロジカルシンキングを学ぶことをおすすめします。
ロジカルシンキングとは、論理的思考のことで、自分の気持ちや感情を筋道を立てて合理的に人に伝えることができることを言います。
自己主張というと、自分の考えを押し付けるイメージを持っている人も少なくないのではないでしょうか。
ですがたとえば、英語しか話せない相手とは英語で会話したり、子どもに何かを教えるときには噛み砕いて分かりやすく教えたりなど、わたしたちは自然と「話をする相手に通じる言語」を使っています。
これは、自分の言いたいことを相手にきちんと伝えるため、つまり適切に自己主張を行うためです。
言語と同じように、内容も「相手に通じるように」話す必要があり、相手に通じるためには論理が必要だということです。
そこで、自分の気持ち・主張・根拠に筋を通し、合理的な話をする能力であるロジカルシンキングができれば人に伝わりやすくなるのです。
簡単そうに見えますが、意外と人は、考えを適切に分解することができていなかったり、好き・嫌いや損得感情に惑わされて答えを歪めていたりすることがあります。
ロジカルシンキングは論理的思考を重ねていくことによって鍛えていくことができる能力です。
「どうして自分はそう思うのか」を深掘りする癖をつけることで、自然と身につけることができます。
ただし人間ですから、好き・嫌いなど論理的な理屈では説明しきれない主張を持つこともあります。
そういう感情や考えを持つことは決して悪いことではないませんので、安心してください。
そんなときは、自分の思っていることを、相手に受け入れてもらえるような言葉で素直に人に伝えることが大切です。
⑤他者受容:NVC(Nonviolent Communication)
他者受容を高めるためには、NVCを高めることをおすすめします。
NVCとは「Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション」のことで、アメリカの心理学者マーシャル・ローゼンバーグ氏によって体系付けられました。
共感能力を引き出し、お互いのニーズを満たし合うコミュニケーション方法のことを指します。
わたしたちは、言葉によって自然と人を傷つけていることがあります。
たとえば…
「記念日なのに仕事するなんてありえない!」
「こっちだって仕事だったんだから仕方ない!」
というカップルの会話があったとします。
言われた方も、言った方も傷つくような「暴力的」な会話です。
お互いを傷つけ合うため、「よいコミュニケーション」とは言えないでしょう。
これを非暴力的に翻訳すると、次のような例が考えられます。
「記念日だから会えるのを楽しみにしてたんだけど、会えなくて残念。自分が優先されていない気がして悲しかった。」
「自分にしか対応できない仕事だから行かざる得なかった。できることなら仕事には行きたくなかったんだよ。悲しい思いをさせてしまったことが悲しいよ。」
いかがでしょうか。
言いたいことは伝えつつ、お互いを気遣う、「よいコミュニケーション」になっていますよね。
こうした会話を重ねることによって、お互いが本当に求めている「ニーズ」を満たすことができます。
そういうコミュニケーションを続けていくことによって、他者受容を高めることができます。
⑥関係調整:ファシリテーションとNLP
関係調整を高めるためには、「場」を読む力を養うことが求められます。
ファシリテーションやNLPといった、場を読む力を養うコミュニケーションを学ぶことをおすすめします。
■ファシリテーション
ファシリテーションとは、人々の思考や感情を上手く場に落とし込み、よい雰囲気を保ちながら問題解決、アイディア創出、学習などの知的な創造活動の場をつくっていく働きのことをいいます。
ファシリテーションでは、場を感じる力、修正する力、リセットする力、つくり出す力が求められており、その一つひとつで必要になってくるのがNLPです。
■NLP
NLPとは心理学の言葉でNeuro Linguistic Programing=神経言語プログラミングのことです。
例えば、
「学校」→「勉強をするところ」
「家に帰ってきたら」→「手を洗う」
「書類作業」→「苦手、めんどくさい」
というように、わたしたちの思考や行動は、さまざまな経験を通してプログラムが作り上げられ、条件反射のようにパターン化された行動が取れるようになっています。
NLPでは、このパターンを使って相手の警戒心をとり除き、安心感、親近感、また無意識レベルの深い信頼関係を築いていくことを行います。
たとえば…
職場の部下との関係は良好とは言えなかったとします。
仕事を頼んだ部下が「分かりました」と言った時に、キャリブレーション(観察)してみると、表情があまり良くありません。
これは相手が無意識的に自分に対して何かを思っている可能性があります。
よく話を聞いてみることにしました。
そこでペーシング(声トーンや話し方など)を相手に合わせながら、説教にならないよう話してみると、
「実は…あなたがつくった書類のテンプレートが悪くて毎回直していたんです。それをすると一日の仕事が終わってしまいます。」
と本当のことを言ってくれました。
テンプレートを直してやり方を変えたら1時間かかっていた作業が10分で解決するようになりました。
場を感じて、修正し、新たな場をつくった結果、部下は自分が依頼する仕事が面倒だっただけで、自分のことを嫌っているわけではなかったことがお互いに分かり、何でも言える関係性がつくられました。
というように、NLPを使って信頼をつくり、得た情報をさらに編集し直すことによって関係性を変化させることができるようになります。
これはとても高度なコミュニケーション・スキルですが、これらを高めることによって豊かな関係性をつくっていくことができます。
まとめ
コミュニケーション能力は複合的な意味合いをもっており、一言に説明することは難しいと解説しました。
コミュニケーション能力の研究をもとに自己統制、表現力、解読力、自己主張、他者受容、関係調整と6つに要素分解を行いました。
各要素は基本スキル(自己統制、表現力、解読力)と対人スキル(自己主張、他者受容、関係調整)に分けられる他、表出系(表現力、自己主張)、反応系(解読力、他者受容)、管理系(自己統制、関係調整)というスキル系統にも分けられるとお伝えしました。
それぞれのスキルがバランス良く分配されている人もいれば、どこかに偏っている人もいます。
偏りが決して悪いわけではなく、偏っていることで何かしらの障害を感じた時には、各スキルを高めることをおすすめします。
自己統制であれば、アンガーマネジメントとストレス・コーピング。
表現力はアサーション。
解読力はメンタルモデルに耳を傾ける。
自己主張はロジカルシンキング。
他者受容はNVC。
関係調整はファシリテーションとNLP。
盛りだくさんな内容となりましたが、コミュニケーション能力を要素分解していくと、実はこんなにも多岐に渡ります。
ご紹介したコミュニケーション能力の構成要素やコミュニケーション能力を高める方法などは、それぞれ専門書籍、セミナー、研修などがありますので、気になる場合はそれらでより深く知識を経験を積んでいきましょう。
コミュニケーション能力について悩んでいる多くの方が、少しでも心晴れることを願っております。
さて、私たちキズキ共育塾は、お悩みを抱える方々のための個別指導塾です。
人見知りが強い、初対面の人と話すことが難しいなどのお悩みを抱えた生徒さんも大勢います。
そうした生徒さんは、授業の中で、勉強に加えて講師との雑談や悩み相談などを通じてコミュニケーション能力を高めることも可能です。
少しでも気になる場合は、お気軽にご相談ください!
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